週刊 沖縄建設新聞(2000年3月15日第1954号 )
(社)日本建築家協会の役割
日本建築家協会前沖縄支部長 山城東雄 |
1987年(旧)日本建築家協会と日本建築設計監理協会連合会(設監連)が様々の思惑を残しながらも建設省指導の下統合し(社)日本建築家協会として発足した。
丹下建三氏を初代会長として当時2万人規模を目指した専業建築家組織として活動を開始している。他団体(日本建築士連合会、日本建築士事務所連合会、以下日事連と呼ぶ)との競合をさけることもあり、県単位でなく全国八支部組織を打ち出し当時沖縄は九州支部の中での沖縄会としてスタートした。以来十年間の活動を通し離島県としてのハンディーや文化や建築を取り巻く環境の違いを訴え続け、全国十番目の支部として1997年6月に会員数55名で発足したことは皆様の記憶に新しいことと思います。しかし依然として、建築士会、建築事務所協会との区別が解らないという方がおられるのであえて説明すると、建築士会は一級建築士、二級建築士を会員対象としてそれこそ職域も多岐に渡り建築士資格を有する個人の集まる組織であり会員数1000人余りの県内最大の建築団体組織である。建築士の資質の向上と建築士法の周知徹底を計る目的で活動しており建築士資格を持つ人全てが入会しなければならない組織でもある。
また建築士事務所協会は俗に云う設計事務所単位の組織、建築設計監理業務の進歩改善とその健全な運営を図ることを目的として活動しており県内では両会とも40年余の歴史を持ち沖縄の建築文化発展に多大な貢献を果たしたことは周知の通りであります。
一方(社)日本建築家協会(JIA)は建築設計監理を専業としている一級建築士あるいは同等の資格やそれらと同様な業務に携わる個人(教育関係や公務員も含めて)を会員資格として成り立っており、設立当初は建築家職能法確立に向けた団体として建設省も建築団体の三極構造として推奨してスタート。しかし時代環境と共に現在はAIA(米国建築家協会)やUIA(世界建築家連合)並の世界に通用する建築家資格制度確立に向けて真剣な論議が続いており建築家継続教育に併せ資格制度実現へ向けかなり具体化が進みプロフェッショナルへの道がかなり近づいているような気運がある。事実JIA近畿支部では継続教育訓練も取り入れた自主認定の建築家登録制度をスタートさせている。
プロフェッショナルとはプロフェス=信仰を告白する語源。信仰を告白して宗教団体に加入することから進んで倫理を守り品位を損なわないことを宣誓しそれを前提として自治的職業団体に加入するものがプロフェッショナルであると云う。西欧では聖職者、弁護士、医師が「古典的プロフェッション」として認められてきた。わが国では大正の初期以来、私たち先輩の永年の努力にもかかわらず建築家プロフェッションを規定する法律はまだない。
1995年1月にWTOが発足。従来までのモノの貿易だけでなく「サービス貿易に関する一般協定(GATS)」によりサービス貿易についても国際ルールを確立しようというのが特徴になっている建築設計分野はプロフェショナルサービスの一つとしてGATSに含まれている。
それにより設計者資格の国際化対応のあり方が課題となっている我国に対し、米、中国は現行の日本の建築士制度では相互認証は難しいとの認識を示している。
中国の建築士制度は米国の建築教育制度を参考に構築されており、中国の一級建築士と米国の建築家は相互通用が可能な環境が整っているという。
この様な中では建設者は1997年度に建築普及センターに建築士の国際化対応を委託し同センターは学識経験者、JIAを含む関係団体による建築設計資格制度の国際相互認証のためのフレームワークを検討している。
この問題は今後書き続けることとして、私共設計者あるいは建築に関わる者にとってさらにPL法に続く住宅品質確保促進法やまた建築基準法の性能規定への移行など設計者へのアカウンタビリティの要請に拍車がかかるものと見られている。
建築は公共のの福祉に大きく関わるものでありさらに建築を取り巻く条件、環境の多様化、複雑化に伴って、設計も多様化、複雑化し多くの専門技術を要することになる。そのような要請に応えるかのように四会(日事連、士会連合会、JIA、建築業協会)連合による民間建築設計管理業務委託契約書が出来上がり沖縄でも三会主催によりその説明講習会が来る十七日に行われる。設計に携わる全ての人(施工会社の設計部の皆様も)に参加してほしい。私たちにありがちな自己満足の世界から顧客満足度を高めるためにも。
『週刊 沖縄建設新聞(建設論壇)』掲載記事
▽2000年3月15日《第1954号》(社)日本建築家協会の役割▽2000年5月10日《第1962号》入札に代る設計者選定方式の提言
▽2000年7月5日《第1970号》質の高い公共建築をつくるためにII
▽2000年.8月30日《第1978号》 サミットの余韻を楽しめるまちづくり